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相続・遺言に関する知識knowledge

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第6章 特別受益

第6章 特別受益


1 特別受益とは

特別受益(法903条)とは、寄与分と共に、相続人間の公平のために法定相続分を修正して、具体的相続分を計算するものです。
具体例を挙げましょう。

<具体例>
被相続人の遺産額が5000万円、生前妻に1000万円の贈与、長女に500万円の留学資金を与え、長男に1000万円を事業継承資金として遺贈。その他の遺言は特になし。まず、特別受益を考慮する前の法定相続分は、
妻:長女:長男=2:1:1
です。

特別受益がある場合の具体的相続分の計算方法は、

[1] 遺産に特別受益分を合算した「みなし相続財産」を算定
(「持戻し」と言います)

[2] 「みなし相続財産」を法定相続分に従って分配する計算を仮にする
[3] [2]の結果得られた各人の相続分から特別受益分を引く
というものになります。

本件の場合、[1]については

5000万+1000万円+500万円=6500万円
になります(長男への遺贈1000万円は元々の遺産額に含まれています。)。

次に[2]について計算すると

妻:6500万円×2/4=3250万円
長女:6500万円×1/4=1625万円
長男:6500万円×1/4=1625万円
となります。

最後に[3]について計算すると、

妻:3250万円-1000万円=2250万円
長女:1625万円-500万円=1125万円
長男:1625万円-1000万円=625万円
となります。

仮に長男が2000万円の遺贈を受けているとすると、これは長男の相続分(1625万円)を越えてしまいますが、その場合でも超過分については返還する必要はありません(民法903条2項)。
ただし、長男の遺贈が他の相続人の遺留分を侵害するときは、遺留分減殺請求の対象となります。

2 特別受益の具体例

特別受益として持ち戻しの対象となる財産は

(1) 遺贈
(2) 婚姻、養子縁組のための贈与
(3) 生計の資本としての贈与

です。

まず、このうち「遺贈」については,目的のいかんにかかわらず全て持ち戻しの対象となります。

また、「婚姻、養子縁組のための贈与」は文字通りの意味ですが、裁判例ではこれを否定したものが多く、認めたものは少ない、とされています。

最後に、「生計の資本としての贈与」は一般にかなり広い意味に解されていまが、判例上、「生計の資本としての贈与」について特別受益性が否定されるのは、当該贈与が相続人の何らかの寄与に対する対価としての意味合いを持つ場合とされています。

また、具体的に特別受益に該当するか否かが争われるのは次のようなケースです。

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3 特別受益者の範囲

特別受益者となるのは、特別受益を受けた「共同相続人」です。

4 特別受益に関する諸問題

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