Q
父が亡くなり,息子3人が相続人です。遺産分割協議の結果,長男は自宅不動産(6千万円相当)を,次男は預金3千万円を,三男の私は山林(3千万円相当)を取得することになりました。その後,私が山林を登記するときに,隣人から山林のうち半分は隣人の土地だと訴えられて敗訴し,結局1500万円分の価値の面積しか登記できませんでした。
共同相続人のうち,私だけが相続財産から予定していた価値を得られず,不公平な気がしてなりません。兄たちに何らかの請求はできませんか。
Q
父が亡くなり,息子3人が相続人です。遺産分割協議の結果,長男は自宅不動産(6千万円相当)を,次男は預金3千万円を,三男の私は山林(3千万円相当)を取得することになりました。その後,私が山林を登記するときに,隣人から山林のうち半分は隣人の土地だと訴えられて敗訴し,結局1500万円分の価値の面積しか登記できませんでした。
共同相続人のうち,私だけが相続財産から予定していた価値を得られず,不公平な気がしてなりません。兄たちに何らかの請求はできませんか。
A
1 相続財産の担保責任
遺産分割がされて各共同相続人が財産を取得した後になって,取得した財産に何らかの欠陥(「瑕疵」といいます)があるために遺産分割時に予定していた価値が存せず,共同相続人間で実質的な不公平が生じる場合があります。具体的には,取得した建物に重大な欠陥があり使用価値を欠く場合,取得した土地が他人物であった場合や借地権等の権利が付いていた場合,債権が回収不能であった場合等が考えられます。
こうした場合,瑕疵ある相続財産を取得した相続人は,他の共同相続人に対して担保責任を追及することができます。具体的には滅失した価値につき他の共同相続人に金銭的な支払いを求めることができるのです(民法911条)。
2 共同相続人の負う担保責任の内容
民法911条は,共同相続人の担保責任割合につき,遺産分割協議で定めた自己の「相続分に応じて」担保責任を負うと定めています。「相続分に応じて」とは「瑕疵がなければ遺産分割の結果として各共同相続人が取得した財産の価額に応じて」と理解されています。
なお,一般的な瑕疵担保責任の内容としては,金銭請求のほかに契約解除が考えられます。相続財産の瑕疵を根拠に遺産分割協議を解除し,協議をやり直せるかという問題です。
この点は,我が国の判例は共同相続人の債務不履行に基づく遺産分割の法定解除を認めていないことを根拠に(最判平成元・2・9民集43・2・1)否定する立場が一般的です。
3 ご質問の検討
ご質問は,遺産分割協議の結果,弟が取得した山林の半分が実は隣人の土地だと判明し,結果として予定された財産価値(3000万円)の半分(1500万円)しか取得できなかったというケースです。
この場合,共同相続人である長男と次男に対しその相続分に応じて担保責任を追及することができます。計算方法としては,遺産分割協議の結果としての各自の相続分である母:兄:弟=2:1:1の割合で瑕疵を各人に割り付けますので,瑕疵(実は隣地だった財産価値相当額)の金銭的評価額を1500万円とした場合の各人の負担分は長男が750万円,次男が375万円,三男が375万円となります。
したがって,三男は,山林の瑕疵に関し,長男に対して750万円を,次男に対して375万円を支払うよう求めることができます。なお,共同相続人が無資力であるために負担分を回収できない場合については,1.047をご参照ください。
「参考文献」
潮見佳男『相続法第二版』弘文堂
東京弁護士会相続・遺言研究部『Q&A相続・遺言110番第3版』民事法研究会