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どのような場合に寄与分は認められるか

どのような場合に寄与分は認められるか

Q

母が亡くなり,兄弟3人が相続人ですが,それぞれがが寄与分を主張して話し合いが進みません。次の事情は寄与分にあたりますか。
1)長男が,母の生前に2千万相当の居住用マンションを買い与えた。
2)次男が,母が体調を崩してから死亡までの10年間,母が営んでいた喫茶店を母に代わって毎日営業し,その売り上げをすべて母の療養費に充てていた。
3)長女が,母の入院中に見舞いに行き,洗濯や母宅の掃除を月に1度行った。

A

1 寄与分とは
寄与分とは,共同相続人の中に被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした者にその寄与分を財産的に評価した相当額を取得させることで,共同相続人間の公平を図る制度をいいます(民法904条の2)。

2 寄与分として認められる行為
寄与分として認められる行為は,被相続人の「財産の維持・増加」への寄与にあたる行為に限られます。具体的には①被相続人の事業に関する労務提供,②金銭出資等の財産上の給付,③被相続人の療養看護,④その他の方法があげられています(民法904条の2)。
 さらに,法律上相続人に求められる貢献の程度(夫婦間の協力扶助義務や親族間の扶養義務等)を超える程度の「特別の寄与」でなくてはなりません。そして,当該寄与行為によって,被相続人の財産が維持・増加したという因果関係も必要です。

3 問いの検討
1)相続人である長男が被相続人である母にマンションを贈与する行為は,財産上の給付としての寄与行為にあたります。この贈与により,現に被相続人の財産額が増加したことから寄与行為と財産増加との間に因果関係も認められます。また,マンションの額は2千万円と安価とはいえず,子の親に対する扶養義務の範囲を超える貢献として特別の寄与に該当する結果,長男によるマンション贈与行為について寄与分が認められるでしょう。
2)次男が,母の喫茶店経営という事業を母に代わって全面的に営み,その売り上げをすべて母の療養費に充てたという事情は,被相続人の事業に関する労務提供にあたり,無償で継続的に行っていることから特別の寄与といえます。そして,これによって被相続人の財産を維持増加したといえるため,次男の行為にも寄与分が認められます。
3)入院中の母を見舞うこと,月に一度程度,洗濯掃除などの家事を行うことは,通常の親子間の扶養義務の一環に過ぎず,特別の寄与とまでは言えません。
以上より,①長男のマンション贈与行為,②次男による喫茶店営業については,寄与分としての考慮が必要であると思われます。

「参考文献」
潮見佳男『相続法第二版』弘文堂
片岡武・管野眞一『家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務』日本加除出版
東京弁護士会相続・遺言研究部『遺産分割・遺言の法律相談』青林書院
近江幸治『民法講義Ⅶ親族法・相続法』成文堂

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