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ゴルフ会員権の相続2

ゴルフ会員権の相続2

Q

父が亡くなり,長男と次男の二人が相続人です。父は預金のほかに,預託会員制のゴルフ会員権を所有していました。弟はゴルフをしないので,この会員権は長男の私が承継したいと考えていますが,そもそも相続によってゴルフ会員権を譲り受けることは可能ですか,可能ならばどのような手続きが必要ですか。

A

1 預託会員制ゴルフ会員権の相続
 預託会員制ゴルフ会員権とは,会員権者がゴルフ場の経営会社に入会補償金を預託し,その会社との間でゴルフクラブ入会契約を結ぶことにより生じるゴルフ場・付帯設備の優先的利用権・預託金返還請求権などの権利と,年会費納入等の義務を包括する債権的法律関係または契約上の地位と考えられています(最判昭和50・7・25民集29・6・1147)。
 預託会員制ゴルフ会員権が相続されるかどうかは,そのゴルフ場の会則によって定まります。会則規定で相続人による会員権(会員契約上の地位)の承継が肯定されている場合,および,承継について会則上に特段の定めがない場合には,相続の対象になると解されています。

2 会則上,相続による承継が認められる場合,あるいは承継について会則上に特段の定めが無い場合
(1)相続の対象となる権利
 相続による承継が認められる場合でも,相続人は,相続によって当然に被相続人と同様のゴルフクラブ会員たる地位を取得するわけではありません。ゴルフクラブとは,会員相互の親睦を目的とし,会員個々の人格,信用,年齢といった個性を重視する集団であるため,その契約上の地位は本来的に一身専属的な権利として相続の対象とならないためです。したがって,ゴルフクラブ会員権の相続によって相続人に承継されるのは,「クラブの理事会の承認を受ければゴルフクラブ会員となることのできる地位」であって,相続人が会員と認められるには,改めてゴルフクラブ理事会に対し自己を会員として承認するように求める手続きが必要です。
(2)遺産分割手続きとの関係
 相続人が複数ある場合,遺産分割協議が終了するまでの間,ゴルフ会員権に関する契約上の地位は共同相続人間の共有状態にあります。したがって,ゴルフクラブ理事会に対して特定の相続人をクラブ会員として承認するよう求める手続きをとるにあたっては,まず,遺産分割協議においてゴルフ会員権を取得する相続人を決めたうえで,その相続人が単独で手続きを行う必要があります。具体的な手続き方法については,各ゴルフクラブに確認して進める必要があります。

3 会則上,相続が否定されている場合
 ゴルフクラブ会則で相続が否定されている場合にはゴルフ会員権は相続の対象となりません。
この場合,被相続人がゴルフクラブに対して有していた各債権債務のみが相続によって相続人に承継されます。具体的には被相続人がクラブに納めた預託金の返還請求権,相続人が滞納していた年会費等の支払義務が考えられ,これらの債権債務を相続人が相続することになります。

「参考文献」
片岡武・管野眞一『家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務』日本加除出版
東京弁護士会相続・遺言研究部『遺産分割・遺言の法律相談』青林書院
高岡信男『相続・遺言の法律相談』学陽書房

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