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具体的相続分の計算方法

具体的相続分の計算方法

Q

先日父が死亡しましたが、私の母、兄と弟、私の4人が法定相続人です。私は長女にあたります。
父が亡くなった時点で残っていた遺産は、自宅不動産(評価額:6000万円)、株式(時価:1000万円)、預貯金(5000万円)でした。
これら遺産の合計額1億2000万円に4人の相続人の法定相続分を乗じると、それぞれの取り分は以下のとおりとなります。
・ 母:6000万円(1億2000万円×2分の1)
・ 兄と弟、私:各2000万円(1億2000万円×2分の1×3分の1)
兄や弟は、この法定相続分どおりに分割しようというのですが、私や母は納得がいきません。
1 母の負担
 まず、父は亡くなるまでの5年間、非常に重い認知症にかかり身の回りの世話に全介助が必要でした。父の前々からの希望で施設には入れず、かつヘルパーさんも頼まずに、母が全ての介助行為を行っており、その負担は非常に大きいものがありました。もしヘルパーさんを頼んだり、施設に入れたりした場合相当の費用がかかったと思いますが、母が献身的に介護をしたおかげで、それらの費用(5年間で合計して1000万円程度)はかからずに済みました。
2 兄や弟への贈与
 また、父は子供を公平に扱うという意識に乏しい人で、兄と弟については、「一家を構えているから」とう理由でそれぞれが自宅を建築する際に2000万円ずつを贈与しました。一方、私については、「結婚して家を出ていったから」ということで、私が自宅を建てる際には全く援助をしてくれませんでした。
3 ご相談内容
 このような、母の負担や、兄・弟への贈与を反映させずに、単に残された遺産を法定相続分にしたがって分配するというのは到底公平とは言えないと思うのです。法律ではどのようになっているのでしょうか。

A

相続が発生した場合に、各相続人が実際に分配を受けられる額は

「相続財産」×指定・法定相続分

だけで計算されるわけではありません。

・ 生前に被相続人からの贈与など特別の受益を受けている人がいる場合(特別受益)

・ 生前に特別の寄与をした相続人がいて、それにより相続財産が維持・増加した場合(寄与分)

にはそれらを相続分の計算の際に考慮することになります。

この「特別受益」「寄与分」を盛り込んで計算した相続分のことを、「各相続人が実際に取得できる相続分」という意味で「具体的相続分」と言います。

具体的相続分の計算方法は以下のとおりです。

「相続財産+特別受益-寄与分」(みなし相続財産)×法定相続分-各相続人の特別受益+各相続人の寄与分

です。

これではわかりにくいと思うので、上記設例に沿って具体的に解説しましょう。

1 みなし相続財産

まず「相続財産+特別受益-寄与分」を計算します。これを「みなし相続財産」といいます。上記設例では下図のとおり1億5000万円がみなし相続財産となります。

スライド1

2 次に、このみなし相続財産に法定相続分を掛けて、そこから特別受益を引き、寄与分を加算します。これによって各自の具体的相続分が算出されることになります。上記設例ではこのようになります。

スライド2

この図のように、上記設例では具体的相続分は以下のとおりとなります。

(1) 母:8500万円

1億5000万円×1/2+1000万円=8500万円

(2) 兄及び弟:各500万円

1億5000万円×1/6-2000万円=500万円

(3) 私:2500万円

1億5000万円×1/6=2500万円

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