MENU

よくある相続法律相談consultation

>
定額郵便貯金につき共同相続人全員の合意無くして支払い請求することが出来るか

定額郵便貯金につき共同相続人全員の合意無くして支払い請求することが出来るか

Q

遺産の中に定額郵便貯金があります。現在遺産分割協議中なのですが、相当時間がかかりそうです。
そこで、とりあえずこの定額郵便貯金について法定相続分に従った支払をして欲しい、という請求をしようと思うのですが、可能でしょうか。
ただし、この定額郵便貯金については預け入れの日から10年を経過していません。

A

定額郵便貯金も金銭債権ですから、「金銭債権は分割債権であり、相続開始と共に法律上当然に分割され、各相続人はその相続分に応じる権利を承継する」という判例の見解(最判昭和29年4月8日)からすると、当然にあなたの請求は可能なようにも思われます。

しかし、問題は、普通預金ではなく、定額郵便貯金であるという点です。定額郵便貯金については、郵便貯金法7条1項3号において 「一定の据置期間を定め、分割払戻しをしない条件で一定の金額を一時に預入するもの」とされています。
とすると、もともと一定期間は分割払戻が出来ない、という約束をした上で預け入れている以上、据置期間内に相続が生じたからと言って、当然に分割払戻が出来ることにはならないと考えるべきと思われます。

したがって、定額郵便貯金については、預け入れの日から起算して10年が経過するまでの間は、共同相続人は分割請求をなしえない、ということになり、結論としてはあなたの請求は認められないと言うことになります。

なお、このように解する結果、預人の日から起算して10年が経過するまでの間は、遺産の共有状態解消の手続である遺産分割の対象になるということになります。 以上について福岡高裁平成17年12月28日決定は以下のように述べて同様の結論を導いています。

ところで、郵便貯金法7条1項3号は、被相続人の遺産である定額郵便貯金について、一定の 据置期間を定め、分割払戻しをしない条件で一定の金額を一時に預入するものと定めている。すなわち、定額郵便貯金は、その預入時において、分割払戻しがで きないという契約上の制限が、法律の定めにより付されていることになる。
そして、この契約上の制限は、その後の相続によっても何ら影響を受けることなく、当然相続 人に承継されるものである。それ故、定額郵便貯金の貯金者が死亡した場合に、その共同相続人が可分債権である定額郵便貯金債権をその法定相続分に応じて承 継取得しても、そのうちの一人がする法定相続分に応じた払戻請求は、上記許されていない分割払戻しを認めたのと同じことになるから、同じ可分債権である銀 行預金債権とは異なり、許されないと解するのが相当である。
その結果、遺産である定額郵便貯金については、他の可分債権と異なり、実質的に遺産の準共 有と同様な事態が継続することになる。その意味で、定額郵便貯金は、同法57条1項の定めにより通常貯金となる、預人の日から起算して10年が経過するま での間は、遺産の共有状態解消の手続である遺産分割の対象となるというべきである。

よくある相続法律相談 一覧