▼ 本件は地方都市在住の資産家のご夫婦からのご相談でした。地元の弁護士さんには相談が出来ないということで、わざわざこちらまで相談に来られたのです。
ご相談があった「自分が妻より先に亡くなった場合には妻に全遺産を相続させるが、万が一妻が先に亡くなっていた場合には子どもたちに相続させる」という遺言は「予備的遺言」といいまして、作成が可能です。
もちろん、そのような複雑な遺言ではなく、状況が変化した時点(本件では奥様が先に亡くなった時点)で再度遺言を作成し直してもよいのですが、その時点において、ご本人に遺言を作成できる能力がなくなってしまっている場合もあります。
そのような場合に備えて作成するのが予備的遺言なのです。
本件では、ご夫婦共にそのような予備的遺言を作成したいというご意向でした。
▼ さらに、本件では相続人の1人が行方不明になってしまっているという特殊事情がありました。
行方不明の相続人に遺産を与えないという遺言はもちろん作成可能なのですが、もしその相続人が後から出て来た場合には遺留分減殺請求がされる可能性があります。そのため、遺言もそれに備えた内容にする必要がありました。
具体的には、「遺留分減殺請求の対象を特定の預貯金とし、後は影響が少ない財産から順番に減殺請求の対象とする」という内容にしたのです。
▼ 本件ではご夫婦共々資産家ということで、財産の種類や額もかなりありました。
しかも、ご夫婦それぞれがクロスするような内容の予備的遺言を作成するご意向を持っていましたので、遺言書は通常のものよりもかなり分厚くなり、かつ作成に要する時間やチェックにかかる手間も相当でした。
しかし、その甲斐あってご夫婦が希望されていた内容を忠実に実行できるような遺言書を作成することが出来ました。