▼ 最初に相談をお聞きした段階では、依頼者の方はとてもお元気で、身の回りのことをすべて1人で行うことができ、かつ判断能力も完全にありました。しかし、ある病気にかかったことから、体の動きが徐々に不自由になってきており、今後の自分の生活や財産の管理方法についてかなりの不安を持っている状態でした。
▼ 高齢者の方の財産を、弁護士などの専門家が管理する方法は、大きく分けて、「任意の財産管理契約による管理」と「法定後見による管理」があります。
「任意の財産管理契約による管理」は、弁護士とご本人との間で財産管理契約を締結し、弁護士が全ての財産を管理するのと引き替えに、毎月管理報酬を支払っていただくというものです。
一方、「法定後見による管理」は、ご本人の判断能力が低下した場合に、その判断能力の程度に応じて裁判所が選任する補助人・保佐人・成年後見人などが財産を管理するという方法です。
本件の場合は、ご本人の判断能力に全く問題が無かったことから、「法定後見による管理」はできず「任意の財産管理契約による管理」の方法をとることになりました。
▼ また、本件では施設入所の際の保証人もいなかったことから、財産管理契約を結んだ弁護士が保証人となりました。ただ、その際に弁護士としては保証人として無制限の責任を負うわけにはいきませんでしたので、施設側と交渉をしてご本人の財産額を上限として保証人となる旨の特約を付して貰いました。
▼ さらに、ご本人はご自身の死後、全ての財産について、ある宗教法人に全て寄付したいという意向を持っておられました。そこで、その内容を踏まえた公正証書遺言を作成し、かつ当該遺言において、財産管理者である弁護士を遺言執行者に指定しました。なお、遺言作成に際しては事前に、当該宗教法人に連絡をとり「このような遺言作成の依頼を受けているが、遺言にしたがって遺産の寄付を受ける意向はあるか」ということを確認しています。これは、宗教法人によってはそのような寄付を受け取らないところもあるため、遺言作成時点においてその点についての確認が必須だからです。