当事者同士の話し合いでは、なかなか前に進まないということで、依頼に来られたため、依頼者の代理人として、交渉ではなく、直ちに家庭裁判所に対して、遺産分割の調停申し立てを行いました。
このケースの場合、遺産分割をしなければならないのは、母名義の預貯金と祖母名義の不動産(土地及び建物)です。
そこで
(1)母についての遺産分割と
(2)祖母についての遺産分割
の2件について申し立てをしました。
当方に弁護士が付いたことにより、姉側にも直ぐに弁護士が付きました。
(1)について、多額の出金の合計と葬儀費用及び入通院費用の合計とが合致しないので、差額につき、既に姉が遺産を受領したことを前提とした主張をしました。
(2)について、依頼者は不動産を取得する希望がありませんでしたので、姉が買い取って買い取り金額のうちの2分の1を当方に支払うか、若しくは不動産を売却し売却金を2分の1ずつ分けることを主張しました(一方が買い取って、他方が金銭を支払う分割方法を「代償分割」、不動産を売却して売却金を双方で分けることを「換価分割」と言います)。
調停では、(1)の差額(使途不明金)が、案の定争いとなりました。姉側からは差額について、母のために色々と姉が支出をしたという説明がなされましたが、差額の全額の使途を説明するまでには至りませんでした。
このまま話し合いがつかなければ、調停は不成立となります。また、こうした使途不明金の問題は、原則として遺産分割の対象とはならないため、調停が不成立となった場合には、家庭裁判所では判断がなされず、地方裁判所に対して、使途不明金についての裁判を提起しなければなりませんでした。
そこで、依頼者と相談をしたところ、時間をかけてでも徹底的に真相を解明して姉を追及するのではなく、なるべく調停での早期解決を目指したいとの意向でしたので、使途不明金の全額ではなく、一部については問題にしないという譲歩案を姉側に提示しました。
姉側は、当方の譲歩案を受け入れましたので、(1)の問題はひとまずクリアとなりました。
次に(2)ですが、姉側が取得を希望せず、売却をして売却金を双方で分けること(つまり換価分割です)を希望したため、双方で協力をして売却先を見つけることとし、より高い金額で売却することを目指しました。
(1)の問題がクリアになった時点で、(2)の不動産の売却先はまだ見つかっていませんでしたが、母の遺産分割と祖母の遺産分割とをバラバラに調停を成立させるのではなく、一挙に解決することを目指しました。
そこで、(2)の売却先を見つかる間に、せっかくクリアになった(1)の問題を双方で蒸し返すということをしないために、双方で中間合意書を交わすこととし、(1)の問題を後から蒸し返さないという合意をして、(2)の不動産を協力して売却することになりました。
まもなく、(2)の不動産は売却することができましたので、
(1)の使途不明金の一部について、既に姉側は受領したことを前提とし、その分、当方は母の預金を多く受領する
(2)の不動産の売却金について、仲介手数料や登記手続費用(名義を祖父から双方に名義変更する手続)等の諸費用を差し引いた2分の1を双方で分ける
という内容の調停が成立しました。