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寄与分は代襲相続できるか

寄与分は代襲相続できるか

Q

母が亡くなり,相続人は長男の私と,先に亡くなった次男の一人娘(母の孫)の2名です。次男は,生前,母に2千万円のマンションを贈与し,母はこのマンションに住んでいました。遺産分割協議で,次男の娘は次男のマンション贈与行為により母の財産が増えたので寄与行為に該当すると主張していますが納得できません。母にマンションを贈与したのは亡くなった次男であり,次男の娘ではないからです。寄与者の子は,寄与分を主張できるのでしょうか。

A

1 寄与分とは
寄与分とは,共同相続人の中に被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした者にその寄与分を財産的に評価した相当額を取得させることで,共同相続人間の公平を図る制度をいいます(民法904条の2)。
寄与分として認められる行為は,被相続人の「財産の維持・増加」への寄与にあたる行為に限られます。具体的には①被相続人の事業に関する労務提供,②財産上の給付,③被相続人の療養看護,④その他の方法があげられています(民法904条の2)。
 さらに,法律上相続人に求められる貢献の程度(夫婦間の協力扶助義務や親族間の扶養義務等)を超える程度の「特別の寄与」でなくてはならず,寄与行為により,被相続人の財産が維持・増加したという因果関係も必要です。
なお,寄与分に該当する行為に関する詳細は,1.037でご説明しています。

2 寄与者の死亡と代襲相続
 相続人が相続開始前に死亡(または相続欠格・廃除)により相続権を失った場合,その者の直系卑属が相続人に代わって相続します(代襲相続。民法887条2項・889条2項)。
 そして,相続人(「被代襲者」といいます)の生前行為に寄与分が認められる場合,その相続上の地位は寄与分とともに代襲相続人に引き継がれるため,代襲相続人は被代襲者の寄与分を主張できると解されています(東京高決平成元・12・28)

3 ご質問について
 まず,相続人である次男が被相続人(母)に2千万円ものマンションを贈与する行為は,特別の寄与に該当し,この行為について寄与分が認められるでしょう。
そして,次男の娘は祖母の相続人であった父の死亡により,祖母の代襲相続人となり,寄与分を有していた父の地位をそのまま承継しています。
したがって,次男の娘は,次男の寄与分を自ら主張することができます。

「参考文献」
潮見佳男『相続法第二版』弘文堂
片岡武・管野眞一『家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務』日本加除出版
東京弁護士会相続・遺言研究部『遺産分割・遺言の法律相談』青林書院
近江幸治『民法講義Ⅶ親族法・相続法』成文堂

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