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保証債務の相続①単純金銭債務の相続

保証債務の相続①単純金銭債務の相続

Q

夫が亡くなり,相続人は妻の私と夫の弟の2名です。先日,貸金業者から私宛に4千万円の支払請求がきました。どうも,夫は,知人の借金4千万円の連帯保証人になっていたようで,業者は,夫が亡くなった以上,妻の私が全額支払えというのです。私は夫の会社事業を引き継いだため,相続放棄をするつもりはないのですが,4千万円の支払い義務がありますか。

A

1 保証債務と包括相続
保証とは,本来の債務者(主債務者)がその債務を弁済しない場合に,債務者に代わって債務を弁済する義務を負うことをいいます(民法446 条)。したがって,主債務者がその債務を弁済せず,債権者が保証人に支払いを求めた場合,保証人は主債務者に代わって債務を弁済しなければなりません。また,相続とは,被相続人に属した一切の財産上の権利義務を承継するものですから(民法896条),保証債務も相続人に承継されるのが原則です。

2 保証債務の性質
 もっとも,保証債務には様々な類型があり,すべてについて相続による承継を認めると被相続人にとって酷な結果になる場合があります。保証の類型としては,①単純な保証債務,②根保証債務,③身元保証の4つがありますが,判例は,保証の類型によって取り扱いを分けています。ここでは,①単純な保証債務についてご説明します。②根保証債務については1.015,③身元保証については1.016をご覧ください。

3 単純な金銭保証債務
主債務者が銀行から100万円を貸りる契約から生じる単純な100万円の貸金債務を保証した場合,この保証債務は金銭債務として相続人に相続されます。
そして,金銭債務は,共同相続人間で,法定相続分に応じて当然に分割されます。したがって,債権者が相続人に,保証債務全額の弁済を求めた場合,相続人は,自分の法定相続分を超える債務については弁済する必要はありません。

4 ご質問について
 夫の保証債務は,4千万円の単純な金銭保証債務ですから,夫の死亡により,相続人間に法定相続分に応じて当然に分割されます。
相続人が妻ときょうだいの場合の法定相続割合は,妻が4分の3,きょうだいが4分の1ですから,妻は保証金額の4分の1の支払いを拒否することができます。したがって,貸金業者に対しては,他に相続人がいることを主張して,3000万円の弁済をすれば足りることになります。
なお,仮に,他の相続人(この場合の夫の弟)が相続放棄をした場合,夫の相続人は妻一人となりますので,妻が4000万円全額を弁済することになります。

「参考文献」
田中章介・田中将『相続と相続税の実例相談200選』清文社
片岡武・管野眞一『家庭裁判所における遺産分割の実務』日本加除出版
安達敏男・浦岡由美子・國塚道和『Q&A相続・遺留分の法律と実務』日本加除出版

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