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相続放棄と,債権者からの差押え(相続放棄と第三者)

相続放棄と,債権者からの差押え(相続放棄と第三者)

Q

父が,不動産一筆と預金を残して亡くなり,相続人は子3人です。遺産分割協議成立まで不動産は相続人の共有登記をしていました。3人で話し合った結果,長男が単独で不動産を,次男は預金を取得し,三男は相続放棄をすると決めました。その後,長男が不動産の登記手続きを申請したところ,三男の債権者である金融業者が三男への貸金債権を根拠に,三男の相続持分3分の1を差し押さえる登記をしていたのです。今から三男が相続放棄をした場合,三男の持分はどうなりますか。

A

1 相続放棄とは
 相続放棄とは,相続人が自己に対する関係で不確定に帰属する相続の効果を確定的に消滅させる相続人の意思表示をいいます。相続放棄により,相続人は最初から相続人ではなかったものとみなされます(民法939条)。
そして,この効果は遺産分割における遡及効と異なり,絶対的な効力とされており,すなわち,相続放棄者は,誰との関係でも,登記等を要せずに放棄を主張できるのです(最判昭和42・1・20民集21・1・16)。
 この点は,遺産分割協議を経た結果,不動産が一部の相続人のものになった場合の第三者との関係(この詳細については,1.029にてご説明しています)とは取り扱いが異なっています。相続放棄は,期間制限のない遺産分割と異なり,相続開始後短期間になされるため,相続人の持分につき利害関係のある第三者が出現する恐れ,つまり,取引安全を害する可能性が小さいため,相続放棄の効果を第三者にも主張できると考えられているのです。

2 相続放棄と登記
上記のとおり,相続放棄の効果は絶対的で,事後的であっても,誰に対しても主張できる強い効力です。
したがって,長男は,三男の相続放棄の効果により三男は当初から相続人ではなく,債権者の行った差し押さえは無効であると主張できます。
これを根拠に,長男は債権者に対し差押え登記の抹消を求め,債権者が応じなければ,裁判所に登記の抹消手続きを請求することができます。

「参考文献」
潮見佳男『相続法第二版』弘文堂
東京弁護士会相続・遺言研究部『遺産分割・遺言の法律相談』青林書院

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